習近平の中国 百年の夢と現実

      習近平の中国 百年の夢と現実

 

「紅二代」とは、抗日戦争や国民党との内戦を戦った革命世代の指導者を先祖に持つ党関係者たちのこと。「紅二代」の政治的な立場は、改革派から保守派まで幅広く、歴史を辿ると、親同士が対立で敵対した人も少なくなく、抗日戦争の時代から共産党に加わり、副首相まで務めた習仲勳を父に持つ習近平も「紅二代」の一人である。

 

1921年に生まれた中国共産党は、日本の侵攻に抵抗するため、当時の国民党政権と離合を繰り返しながら、主に農村地帯でのゲリラ戦を担った。日本が降伏した後は、農民などからの支持を受けて国民党との内戦に勝ち、1949年に中華人民共和国を打ち立てた。

日本の侵攻から祖国を守ったという物語は、改革開放以来の経済成長の実現と並び、共産党とが中国を率いる最大の理由であり、政権の正統性の根拠であり続けている。

 

1990年代の末、政府は都市の住宅制度改革を行った。社会主義の下、住宅は政府機関や国有企業などが所有し、従業員に貸し与える形だったのを改め、「払下げ」のような形で従業員に売り渡した。正確に言えば売り渡したのは不動産の所有権ではなく使用権なのだが。

 

「数億人の農民の存在が抜け落ちているのは、あなた方外国人が中国を理解する上での一番の問題です。」と山東省の貧しい農村に育って、独学で法律を学んだ盲目の人権活動家の陳光誠は著者に話した。

習近平は「革命老区」(共産党が政権を取る前、旧日本軍や国民党と戦っていた時代に根拠としていた各目の聖地であり、山間部で今も貧しい地域が多いとされる)と呼ばれる地域に好んで足を運び、そこに住む人々の暮らしを底上げするように繰り返し命じている。

 

「新公民運動」、官僚の腐敗や専横ぶり、地方出身者に差別的な教育制度などに不満を持つ人々が、言論の自由や集会の自由など、中国の憲法が認めている権利を足場に、その改善を訴えようとした動きである。

 

共産党と国民党が中国の支配を争った内戦は、1949年、蒋介石率いる国民党が台湾に逃れたことで終結した。それ以来、実体としては、中国本土に共産党中華人民共和国、台湾に国民党の中華民国が並び立つ状態が続きながら、両者は互いを国家としては認めず、対立を続けてきた。双方の最高指導者が顔を合わせることは相手の存在を認めることにもつながるため、長らくタブーとされてきた。

2015年1月7日、シンガポール習近平馬英九総統による中台首脳会談が行われた。